外国人参政権、とっても気になっています。
丁度わかりやすい記事がありましたので転載しておきます。
『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2016/7/22より転載
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2016/07/22/
「外国人参政権という争点」
From 施 光恒(せ・てるひさ)@九州大学おっはようございまーす(^_^)/
先週の土曜日、三橋経済塾で講演させていただきました。大まかな内容は、三橋さんが7月17日付のブログで紹介してくださっています。
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12181393862.htmlその講演のなかで、私は、「リベラル・ナショナリズム」という近年の英語圏の政治理論の一潮流を引きながら、民主主義の政治が行われるためには、国民の連帯意識が必要だという話をしました。
民主主義は、「妥協・調整の政治」という側面があります。さまざまな利害や考え方をもつ人々が集まり、互いの意見に耳を傾け、話し合いながら、皆がほぼ納得できる落としどころを探っていこうとします。
このとき、人々の間に、強い連帯意識(仲間意識)や相互信頼感がなければなりません。そうでないと、互いに相手に耳を傾けたり、必要とあれば自分たちの考えを改めたりといった行為が行われなくなってしまいます。民主主義の政治とは、利害や政治的信条を異にする人々が、それでもなおバラバラにならずに協力しながら半永久的に一緒にやっていこうという考えることのできる強い連帯意識があるところでないと成立しないのです。
「リベラル・ナショナリズム」の論者は、現代では、利害や見解を異にする人々をまとめられる強い連帯意識とは、「同じ○○人だから」という意識、つまりナショナルな意識(国民意識)しかあり得ないと主張します。私もそう思います。
逆に言えば、こうした国民の連帯意識がないところでは、民主主義の政治は難しいのです。連帯意識がないと見解の相違が、そのまま人々を分断してしまい、国が分裂してしまいます。例えば、中国が民主化できない理由の一つは、国民の連帯意識が希薄だからです。
中国が民主化されれば、間違いなく、即座にチベットやウィグルなどでは分離独立運動が展開されるはずです。ひょっとしたら、「漢民族」だと思われている地域同士でも分離独立の動きがでてくるかもしれません。中国政府が民主化を嫌うのは、そのように国家が分裂するのを防ぐためというのが一つの理由でしょう。分裂するのが嫌なので、民主化を押しとどめているのです。
「民主主義にはナショナルな連帯意識や相互信頼感が必要だ」という主張は、外国人地方参政権の問題ともかかわってきます。
東京都知事選では、外国人地方参政権の是非が争点の一つに上がっているようですね。
2009年の秋に民主党政権ができてしばらくの間、外国人地方参政権の是非は活発に議論されていました。民主党は、以前から賛成の立場でしたし、加えて、選挙の際に民団からかなり応援してもらったようで、地方参政権の付与の道筋をつけることに熱心でした。
私は強い反対論者ですので、かなり危機感を持っていました。ただ、当時は、今のように、このメルマガにも書いておりませんでしたし、新聞の連載コラムのようなものも持っておりませんでした。反対論を訴えたかったのですが、意見を言える場がなかったのです。
それで、産経新聞の「アピール」という専門家向けの投書欄に投稿し、掲載してもらいました。
ネット上には出ませんでしたので、目にした方はあまりいなかったのではないかと思います。恐縮ですが、ここに再掲します。
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施 光恒「『外国人参政権』は民主的審議を阻害」(『産経新聞』2010年1月26日付〈アピール〉欄)外国人地方参政権の付与は民主主義を機能不全に陥れる恐れがある。
民主的審議では、当事者間での「公共の利益」の共有が大前提である。「公共」は当事者共通という意味。「公共の利益」が具体的に何を指すかについては見解の相違があってもよい。むしろ見解の相違があるからこそ人々は他者の見解に耳を傾け話し合う。だが「公共の利益」の共有自体は不可欠である。
「公共の利益」の共有が失われれば、通常の意味での民主的審議は不可能である。単なる交渉や駆け引き、取引にしかならない。国際会議では大多数がこの類だが、国際会議の場合はそれでもよい。話がまとまらなければ、審議の延期や中断、審議の枠組みの再編成などを行えばよいからである。だが国内政治では異なる。審議の延期や中断が頻繁に生じれば民主主義は機能不全に陥る。
外国人参政権が認められれば「公共の利益」の共有という条件が失われる。地方レベルで、同じ地域の住人として「公共の利益」について話し合うのだからいいではないかという反論もありえよう。しかし地方と国とは密接不可分である。
例えば、沖縄の基地問題では、現行では住民は、地域の利益と同時に、日本の安全保障上の利益も考慮に入れて話し合う。だが、もしこれが、一方は「地域の利益+日本の利益」、他方は「地域の利益+他国の利益」を念頭に置き審議に臨むという構図になってしまえばどうか。互いに他者の見解に耳をかたむけなくなり、民主的審議は失われ、駆け引きや取引の類になってしまう。審議の中断や延期が頻繁に生じ、民主主義の機能不全、ひいては停止につながる恐れがある。
民主的審議を重視する観点に立てば、外国人地方参政権の付与は避けるべきである。国籍の共有、つまり政治的な利益や運命をともにするという意識と覚悟の共有こそ参政権付与の必須条件である。
*****この記事のなかでは、「連帯意識」という言葉は使っていませんが、言いたかったことは、さきほど述べた「民主主義には連帯意識や相互信頼感が必要だ」ということと同じです。
「我々は、現時点での解釈は異なっているとしても、同じ「公共の利益」(国レベルであれば「国益」)の実現を目指している点では一緒だ」とお互いに考え、信頼し合える場でないと、民主主義の政治は、うまく行かなくなってしまいます。
外国人地方参政権の導入は、記事で書きましたように、民主主義のこのような前提を壊してしまう恐れが大きいのです。
ところで、私の投稿が出る少し前に、やはり産経新聞の〈アピール〉欄に、外国人地方参政権反対の投稿が掲載されたことがあります。
鄭 大均(てい・たいきん)氏(首都大学東京・教授)の投稿です。鄭氏は、元・在日韓国人で、現在では日本国籍を取得した韓国系日本人です。『在日韓国人の終焉』(文春新書、2001年)、『在日・強制連行の神話』(文春新書、2004年)など、日韓関係に関する著作が多数ある方です。
鄭氏は、外国人参政権に反対する理由として、一つは、在日コリアンのアイデンティティの観点からの議論、もう一つは、日本の安全保障の観点からの議論を提示しています。
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「外国人参政権に2点で反対」(2009年10月6日付 産経新聞〈アピール〉欄)永住外国人への地方参政権(外国人参政権)付与に反対する理由を2点記しておきたい。
第一に在日コリアン自身にとって好ましいものではない。永住権をもつ在日コリアンの多くは日本生まれの世代だが、彼らは韓国・朝鮮籍を持ちながら本国への帰属意識にも、外国人意識にも欠けており、参政権付与は彼らの不透明性を永続化させるだけだろう。
在日の多くはこれからも日本に住み続ける、そのためには日本国籍が必要なのを知っている。日本国籍を取得するコリア系日本人が、年間一万人近くも誕生していることはもっと知られていい事実だ。民団(在日本大韓民国民団)の参政権運動は在日の意思を代弁したものではない。
反対理由の第二は日本の政治に対する外国政府からの干渉を高めるからだ。2008年末の統計では、主に在日コリアンからなる特別永住者が42万人で、一般永住者は49万人。南米や中国出身者が多いが今後、増大するのは中国人だろう。もし参政権法案が実現したら何が起きるか──。永住資格が居心地がいいので、その子供も中国籍を維持するに違いない。彼らに北京政府が無関心でいられるだろうか。ソウル政府がそうであるように、彼らも政治的に利用しようとする可能性が高い。
もうひとつ。今回の衆院選に民団が組織をあげて参加したことは興味深い。主要政党の候補者を招いて意見を交換し、参政権付与に否定的な候補者には翻意を促したという。民団がいずれは日本の国政選挙権を要求するだろうことは予測できたが、それにしても大胆な行為だ。
韓国では今年2月に公選法が改正され2012年以降、韓国籍を持つ在日は韓国の国政選挙に参加できることになった。韓国の大統領選や総選挙に投票できるようになったのだ。本国での選挙権に加え、日本での参政権が実現したら、これは特権というものだろう。
*****鄭氏のこの記事が書かれたのは2009年ですからもう7年前です。鄭氏の指摘通り、特別永住者の在日コリアンは、2008年末は約42万人でしたが、毎年減り、現在(2015年末)は約34万人です。
一方、一般永住者は、2008年末は全体で約49万人、そのうち中国人永住者は約14万人、南米出身者も約14万人でした。その後、2015年末の統計では、一般永住者は全体で約70万人、そのうち中国人永住者は約22万5千人と大幅に増えました。(南米出身者は微増にとどまり約15万人です)。
鄭氏が予測したように、外国人地方参政権の問題は、在日コリアンの問題から、徐々に、主に中国人からなる一般永住者の問題へと比重が移っています。
安倍政権は、一般永住者を今後、どんどん増やす方針です。今年4月の産業競争力会議では、安倍首相自身が、主に専門的能力や技術をもった外国人を念頭に置いてですが「永住権取得までの在留期間を世界最短とする」と断言しています。
「高度人材」の永住権申請条件は、通常、日本在留期間が原則10年であるところを、特例で現在、5年に短縮されています。それをさらに3年未満にまでしようというのです。
単純労働者に関しても、自民党内では受け入れ容認の方向に舵を切っています。今年5月に自民党の政務調査会、および労働力確保に関する特命委員会が「『共生の時代』に向けた外国人労働者受け入れの基本的考え方」という報告書を提出しました。
このなかで、今後の議論では、「単純労働者」という区分自体を見直し、この区分で論じられてきた人々の受け入れを「介護」「農業」「旅館業」などニーズがある分野を個別に論じていくという大まかな方針が示されています。「我が国の活力を維持するために」「外国人に今以上に活躍していただくことが必要」だからだそうです。
これは「高度人材と単純労働者の境目をなくす、つまり単純労働者の受け入れを解禁しようとしている」と解釈できるでしょう(出井康博「永住権『世界最短付与』という日本の政策がおかしい」『週刊新潮』2016年7月21日号)。
だとすれば、これまで「単純労働者」とされてきた者からも容易に永住権を得る者が増えてくるのではないでしょうか。
あまり表だって議論されないうちに、日本は、どんどん移民国家へと舵をきっているのが実情です。
こういう状態で、外国人地方参政権付与を認めれば、どうなるでしょうか。
やはり中国出身者がますます永住権をとるようになるでしょうから、鄭大均氏の7年前の懸念が実現してしまう方向に進んでいるといえそうです。たとえ現在は、中国政府はそのように考えないとしても、何らかの形で日中関係が悪くなった時に、一つの圧力として、投票権をもった在日中国人を中国政府の指示で動員するということはありそうです。(チベット問題で揺れた北京オリンピック前の2008年4月、長野での聖火リレーの際に、チベット支援の人々に圧力をかけるため、多くの中国人留学生が事実上、動員されたことが思い出されます)。
安全保障に関する外交カードをみすみす渡すことはありません。
小池百合子氏は、テレビ番組に出演した際にその危険性を指摘していましたが、東京には離島や小さな自治体が結構あります。選挙権を得た中国などの外国人が意図的に移住して、小さな自治体の政治を牛耳ってしまうということはそれほど難しくありません。
例えば、青ヶ島村は、同村のHPによると人口165人で、村議会の議員定数は6人です。2013年9月の選挙では、有権者は138名で6番目の当選者の得票数はわずか13票です。村長選挙でも、得票数64で当選しています。悪意ある外国人が村の政治を乗っ取ることは、その気になればさほど困難ではありません。
以上のように、外国人地方参政権は、民主主義の機能不全を引き起こす恐れがあるという点からも、鄭大均氏が指摘するように在日コリアンのアイデンティティを曖昧なままにしてしまうという点からも、また、当然ながら日本の安全保障の観点からも、認めるべきではありません。個人的には、都知事選の争点以前の当たり前の問題だと思います。
長々と失礼しますた…
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